VRXとiG50plusの氷上性能の矛盾を考察【1】

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2015年に比較したときはアイスガード5プラスが勝利した氷上制動性能。しかし、2017年に公表されたデータではブリザックVRXの圧勝と逆転してしまった。矛盾が出た以上なかったことにはできません。なんとかナビゲーターの出来る範囲で原因を考察してみましょう。

 


<目次>

2015年のおさらい

2017年のおさらい

VRX同士の大きな差

大きな差を生んだ原因考察

今回のまとめ

 

続きは考察中

 


 

2015年のおさらい

まずは2015年に公表されたデータを見てみましょう。

タイヤ銘柄ブリザック
ヴイアールエックス
BLIZZAK VRX
車種ノア
排気量2,000cc
前輪駆動
ABS作動
2名乗車相当
タイヤサイズ195/65R15
タイヤ空気圧240kPa
場所軽井沢風越公園
アイスアリーナ
路面状況氷盤
気温5.9℃
路面温度データなし
試験速度20km/h
制動距離14.7m
タイヤ銘柄アイスガード5プラス
ice Guard5 PLUS
iG50+
車種ノア
排気量2,000cc
前輪駆動
ABS作動
2名乗車相当
タイヤサイズ195/65R15
タイヤ空気圧240kPa
場所軽井沢風越公園
アイスアリーナ
路面状況氷盤
気温3.9~4.0℃
路面温度-1.6~-1.4℃
試験速度20km/h
制動距離13.0m

氷上制動距離は「VRX」で14.7m、「iG50plus」で13.0mと確かにアイスガードが勝利しています。アイスガードの試験環境の方がやや気温が低いことから、氷盤路面の温度もアイスガードの方が低いことが予想されます。氷盤路面では水膜の出来やすさが氷上制動性能に大きく影響し、0℃付近では多くの場合少しでも温度が低い方が有利なようです。その点で言えばアイスガードの方が若干有利な条件で試験が行われているのかも知れません。

 

2017年のおさらい

次に2017年のデータを見ていきましょう。

タイヤ銘柄ブリザック
ヴイアールエックス
BLIZZAK VRX
車種50プリウス
排気量1,800cc
前輪駆動
ABS作動
2名乗車相当
タイヤサイズ195/65R15 91Q
タイヤ空気圧F)250kPa R)240kPa
場所秋田県立スケート場
(室内)
路面状況氷盤
気温1.3℃
路面温度-2.3℃
試験速度20km/h
制動距離11.45m
タイヤ銘柄アイスガード5プラス
ice Guard5 PLUS
iG50+
車種50プリウス
排気量1,800cc
前輪駆動
ABS作動
2名乗車相当
タイヤサイズ195/65R15 91Q
タイヤ空気圧F)250kPa R)240kPa
場所軽井沢風越公園
アイスアリーナ(室内)
路面状況氷盤
気温6.7~7.2℃
路面温度-1.0℃
試験速度20km/h
制動距離14.2m

氷上制動距離は「VRX」で11.45m、「iG50plus」で14.2mとブリザックが圧勝しています。使用車種など試験条件はそれなりに近く、今回の氷盤温度の条件はブリザックがやや有利なようです。2015年時と違い、ブリザックとアイスガードで試験場所が異なることが少し気になります。

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VRX同士の大きな差

ブリザックとアイスガードの比較云々の前にスッと飲み込めないことがあります。2015年時の試験を基準に考えて約22%も制動距離が縮んでいるのです。同じサイズの同じタイヤなのにここまで氷上制動距離が違っていいのでしょうか?何か根本的に問題があるような気もしますが、試験の環境から原因となる要素を考えていきましょう。

 

➀温度差

氷盤路面の温度は2015年はデータが公表されていないので直接の比較は出来ませんが、2017年の方が気温が3.6℃も低いので2017年の方が多少はやさしい条件と言って良いでしょう。

 

➁空気圧

一般にタイヤは空気圧を下げる方がトラクションがかかりやすくなるため、わずかに2017年の方が厳しい条件と言えますが無視できる差でしょう。

 

➂車種の差

車種の差からくる車重の差は制動距離に大きな影響を及ぼし当然重い方が厳しい条件と言えます。つまりノア(約1,600kg)の方がプリウス(1,400kg)より厳しい条件なので2017年の方がかなりやさしい条件と言えます。

 

総合

➀~➂を総合すると2017年の条件の方が明らかにやさしく氷上制動距離が短いのも頷けます。しかし、それにしても制動距離に22%もの差が出たのは何故なんでしょうか?次項でもう少し突っ込んで考えてみましょう。

 

大きな差を生んだ原因考察

ブロックの倒れこみ

実はナビゲーターはこの数年VRXを見てきて気になっていることがあります。重い車に装着したときやアグレッシブな運転をする方では極端に摩耗が早いケースを散見するのです。

左の模式図を見てください。トレッド剛性が十分でないとブロックが倒れこみます。「VRX」を含め最新の多くのスタッドレスタイヤはサイプの間をギザギザにしてお互いを支えるようにしたり様々な方法でこれを防いでいます。しかし、それでもコンパウンドが軟らか過ぎたり倒れこみ方向に十分な厚みがなければ、制動時に模式図のような角が立ち過ぎた状態になります。そして点に負荷が集中すれば消しゴムの角を使った時のように顕著に減っていきます。これが「VRX」の早期摩耗の原因ではないかと考えられるのです。

 さて、氷上性能に話を戻しましょう。もし上の模式図の状態が起こっているとするならばタイヤと路面との接地面積は極端に小さくなっていることになります。左は線で路面をとらえているのに対し、右は面全体で路面をとらえており後者の方が効くのは当然であり仮説は理にかなっていると言えそうです。

 

もう1つの事実

ナビゲーターが実際に履いてみて感じたことはトレッド剛性が弱すぎるのではないかという疑いです。「VRX」を履いたことのある方の中には一定数同様の感想を持つ方がいるのではないでしょうか。ナビゲーターが「VRX」を使ってみて感じていた感覚として、時速50~60km程度の中速域以上でABSが作動するような高い負荷のかかるブレーキングをすると極端に制動距離が延びると感じていました。つまり極端に大きな負荷でなくともブロックが大きく倒れこみ、理想的な接地面を失う限界点が低いのではないかと考えていたのです。

 

今回立てた仮説と使用した感覚から考えられることが符合していることから仮説はより信憑性のあるものになったと考えられないでしょうか。そして、2015年の試験に使用された車種「ノア」は車重が重い割にタイヤが細く重心も高いため、狭い面積に大きな力がかかりブロックが大きく倒れこんだと考えられます。それに対し「50系プリウス」はかなりマイルドな条件と言え、ブロックの極端な倒れこみがなかったため大きな差を生んだと考えられます。

 

リンクの差

そしてもうひとつ。これは確かめようのない事実ですが、2015年と2017年の2つの試験は別の場所で行われており、リンクの氷の状態が大きく違う可能性がああります。
 これを言うと全てをぶち壊す可能性がありますが敢えて言います。氷の状態で制動距離は大きく変わります。少し脱線しますが、長野オリンピックではスピードスケートのリンクを作成する際に「輪切りにした氷筍を敷き詰めてリンク」としました。これは氷筍はほぼ完全な単結晶でありよく滑るためです。このリンクは数々の新記録を生み出すだろうと予想され、予想通りスピードスケート10競技中4競技で世界新記録を樹立しました。話を戻しましょう。氷筍が敷き詰められているようなことはないでしょうが、別会場で行われた試験ではリンクの作り方や整備の仕方が違い環境が大きく違ったために、これが試験結果の大きな差を生み出すひとつの要因になったことも考えられます。

 

今回のまとめ

➀「VRX」の2つの試験の大きな差として考えられる最も大きな要因は車種による車重の差。
➁車重により大きな差が出たのは「VRX」のトレッド剛性の弱さの可能性がある。
➂本文では触れませんでしたが「REVO GZ」まではあった重量車専用チューニングがなくなったためケース剛性が落ち、負荷がかかった際の接地面形状が理想的でない可能性。

 

次回

長くなってしまったので続きは次回にします。次はアイスガード5プラスの試験の矛盾について触れていきます。

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