タイヤの静粛性能アップの新たな流行?

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近年、欧州のタイヤメーカーでタイヤ内部にポリウレタンを貼り付けて静粛性能の上昇を図る技術が流行ってきている(ような気がする)。

 

欧州タイヤメーカー各社の技術名称

ピレリノイズキャンセリングシステム(PNCS)

 欧州メーカーで始めにこの技術を採用したのはピレリだったろうか?ピレリノイズキャンセリングシステム(PNCS)の名で一部のタイヤのごく僅かなサイズにではあるが広がりつつある。

 

コンチサイレント(ContiSilent)

コンチネンタルではコンチサイレント(ContiSilent)の名でこちらも一部のタイヤのごく僅かなサイズに採用されている。

 

アコースティックテクノロジー(ACOUSTIC TECHNOLOGY)

そしてこの春からのミシュランのカタログにもミシュランアコースティックテクノロジーの名で掲載されホームページでも詳しい技術が公開されています。

 

技術要素

タイヤは主に2つの構造から形成されています。1つは靴底に当たるトレッド、そしてもう1つは空気を入れるケースです。タイヤは接地する際にケース内の空気の一部が瞬間的に圧縮されます。この圧力変化が空気を振動させ響いて大きな音になります。これは空洞共鳴音の呼ばれる音で、太鼓を叩けば中の空気が振動して大きな音が出る仕組みと同じです。

 

なんらかの方法でこの空気の振動を弱めることが出来れば発生する音や振動を抑えることが出来ます。そこで考えられたのがタイヤ内部にポリウレタンスポンジを貼り付けて空気の振動を吸収する技術です。更にどこのメーカーサイトにも書かれていませんが微細な孔(あな)は音のエネルギーを減衰させる効果があることが知られており、これにより更に音を減衰する効果も狙えるかもしれません。

 

初めて採用したのはダンロップ


ご存知の方も多いかもしれませんが、この技術の先駆者と言えば我が国の住友ゴム(タイヤ販売はダンロップのブランド名で展開)です。2006年「LE MANS LM703」に世界で初めて採用され、現在も進化しながらVEURO VE303LE MANS Vや一部純正タイヤなどに採用され、ダンロップタイヤのノイズ低減に貢献しています。これと同様の技術が今ヨーロッパで広がりを見せているわけです。

 

なぜ流行しているのか

これらはナビゲーターの推測ですが以下のようなことが考えられます。

 

欧州の社外騒音規制

日本でも将来採用が検討されていますが欧州では車が車外に出す音に法的な規制が設けられています。そのため基準をクリアしないタイヤは販売することが出来ません。こうしたこともあり社外騒音規制は一般にも広く浸透しているため、法令より高い基準での静粛性能が追及され本技術が採用されていると考えられます。

 

自動車メーカーからの要請

現状、自動車メーカー純正タイヤのみの展開で高級車を中心に採用されていることから、自動車メーカーによる高い要求に応えるため必要に迫られて採用されてたと推測されます。

 

特許

特許については素人ですので、これは完全な推測ですが、ダンロップのがサイレントコアを採用してから10年以上が経ちました。特許権の存続期間は日本では「出願」から20年(欧州でも20年のようです)出願公告から15年なので、もしかしたら特許切れなんてことも関係しているのかも知れません。

 

日本国内では

今のところダンロップタイヤ以外で本技術を採用したタイヤを発売しているメーカーは確認できていません。国内でも社外騒音規制が法律として定められれば採用するメーカーが出てくるかもしれません。

 

この技術の実力は?

道路の継ぎ目を乗り越す音(ダンピング音)は非常によく消してくれます。欧州は国によっては道が悪かったり石畳を走らなければならないなど日本よりノイズが出やすいため大きな効果が見込めます。日本は道がきれいなので効果は限定的かもしれません。
というのも勿論すべての音を消してくれるわけではなく、個人的にはきれいな道を走っている際のロードノイズの低減効果は大きくないように感じます。







注意点

パンクの際のみ2点注意点があります。

 

パンク修理剤の使用が出来ない

最近では標準装備にスペアタイヤが装備されておらず、代わりにパンクの際に液剤を注入して応急処置をするパンク修理キットが標準装備されている車が増えてきました。しかし、この技術が採用されたタイヤはウレタンスポンジがあるため、パンク修理剤が効果的に漏洩箇所に届かず空気漏れが止まらないため液剤の使用が出来ません。またこれを知らず間違えて使ってしまうと修理して再使用できるはずのタイヤも使用不能になってしまうので注意が必要です。

 

対処方法

➀スペアタイヤが装備されている車はタイヤ交換をして修理工場などへ向かう。
➁パンク修理剤しかない場合はロードサービスなどへ連絡し積車で修理工場などへ向かう。
➂パンク修理剤しかない場合はパンクしたタイヤのみを外し修理工場などへ持っていく。
これらの方法を使えば、修理して再使用できるタイヤを使用不能にすることはありません。
※但し、純正採用されているパンク修理液剤は、使用した場合タイヤが再使用できないと記述されているものがほとんどです。そのため修理剤を使用した場合スポンジ採用タイヤでなくとも再使用不能になる場合が多くあります。

タイヤが再使用できるパンク修理剤

 

パンク修理の手順が多い

修理そのものは業者に任せればいい為ためユーザーは何も気にする必要はありませんが費用に多少の差があることがあります。ガソリンスタンドなどで修理として行われる表からの打ち込み応急処置なら手順は変わりませんから費用も変わらないはずです。しかしタイヤの裏側から貼り付け修理を行う場合、貼り付けられたウレタンスポンジの一部を切り取る工程が発生するため修理費用が通常より500~1,000円ほど高い場合があります。小さな小さな注意点ですけどね。

 

まとめ

・欧州でタイヤ内部にポリウレタンスポンジを貼り付けてノイズを低減する技術が僅かながら広がっている。
・空洞共鳴音を低減する効果がある。
・広がりを見せているのは欧州の社外騒音規制などの影響があると考えられる。
・世界で初めて採用したのは住友ゴム工業(ダンロップタイヤ)である。
・欧州メーカーでは今のところ純正タイヤのみの採用にとどまっている。
・国内メーカーではダンロップタイヤが採用するのみ。
・タイヤに強い衝撃が加わって発生する音は大きく低減される。
・全ての音を消してくれるわけではない。

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