窒素ガスは効果があるか?

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1.前置き

空気中では窒素が78%程、酸素が21%程、1%はそれ以外です。窒素充填というと大抵は、タイヤ内部の気体の95%以上を窒素にするということです。それは15%から20%程窒素の割合が増える程度であるということを意味しています。つまり酸素と窒素の性質がよっぽど大きくないと効果として実感するのは難しいということになります。

 

※管理人は曲がりなりにも大学と大学院で分子内における電子雲のシミュレーションで学位を修めています。

 





2.よく言われる効果は本当か:〇、△、×

2-1.タイヤ内部の圧力(以降は内圧)の自然低下が遅くなる:〇

確かに遅くなるようです。
調べてみたところ、確かに天然ゴムなどタイヤの原材料に使われる一部のゴムでは酸素と窒素の透過率には倍ほどの差がありました。一方で透過率にほとんど差がないゴムもあり、更にタイヤ内部にはインナーライナーと呼ばれる空気の透過を防ぐ素材が使われていることから大きな差が出るようには考えにくいのです。
しかし、ブリヂストンが実験データも公開していますし、私自身も自分の車で実験してみましたが確かにゆっくりになるようです。
なんとも腑に落ちないのですが、ブリヂストンも実験室で実証し自家用で走行もしながら実証されているのだから信じないわけにもいかないので、不思議だけれど「ある程度の効果はある」としておきます。

 

2-2.燃費が良くなる:△

正確に表現するならば燃費の悪化を抑制します。
内圧が下がった状態で走行し続けるとタイヤが不必要に変形し、余計な発熱をします。つまり折角前進するために作り出したエネルギーを熱エネルギーにして捨ててしまっていることを意味します。また、たわみが大きくなり接地面が無駄に増えるため抵抗が増大し燃費が悪化します。前述した窒素充填による空気が抜けにくくなる効果によって、内圧低下による変形を抑制するので、理想的な内圧状態が続きます。つまり窒素充填したからといって燃費が上がるのではなく、「内圧低下による燃費の低下を防ぐ」が正しいでしょう。
一部で空気より窒素のみの方が軽いから燃費が良くなると書かれていることがありますが何グラムの話でしょうか?

 

2-3.タイヤの寿命が伸びる:△

正確に表現するならばタイヤの寿命の低下を抑制します。
非常に間接的な話ですが、あまりに内圧が下がった状態で走行し続けるとタイヤが無駄に変形して発熱し、サイドウォールなどにダメージを受けます。また極端に内圧が低い状態だと本来接地しないショルダーからサイドが接地し偏摩耗を引き起こす為、タイヤの寿命を縮めます。しかし、定期的な内圧チェックをしていれば、これらの問題は発生しないため、窒素充填すればタイヤの寿命が伸びるわけではありません。
タイヤ内部に酸素がないので劣化を防止すると書かれていることがありますが、紫外線など他の要因がない状態では酸素はそれほど大きな反応性を持たないので内部からの劣化は無視できるレベルでしょう。

 

2-4.乗り心地が良くなる/静かになる:×

乗り心地も静かさも変わりません。
オカルトでは?いや言い方が悪いので修正しますがプラシーボ効果では?気体の弾性はそれほど変わらないし、乗り心地が良くなるというのだからと、具体的に衝撃を吸収する物理化学的性質の大きな差があるか調べてみましたが見つけられませんでした。念のため自家用車で走行してみても特別変化は感じられませんでした。

 

2-5.熱膨張の影響を受けにくい:×

多少の差はあれど気体の熱膨張はほとんど変わりません。
コンプレッサーからエアドライヤーを装備しないでタイヤへ空気充填を行っている店舗ではタイヤ内へ水分が混入されてしまうケースがあります。液体⇔気体の変化はとても大きいので、タイヤ内に多くの水分が混入した場合は熱による内圧変化は膨大なものになります。つまり上記のようなドライヤーなし店舗でタイヤ交換をすると温度変化で酷く内圧が変化してしまうケースがあります。窒素発生器や窒素ボンベなどからタイヤへ気体充填を行った場合、水分が混入することは考えにくいので、水分に起因する熱膨張の影響を受けにくいとは言えます。ただ、元々内部で水滴になるほど大量の水分が混入していなければ、酷い熱膨張を起こすこともないので窒素を充填したことで熱膨張の影響を受けにくくなったとは言えません。

 

2-6.事故の際など、燃えない:◎

確かにそうですね。でも、あたり一面空気の中を走っているのに意味があるのでしょうか?





3.結果

3-1.窒素充填に価値があるか

「無価値ではない」。あなたにとってもタイヤにとっても悪いことはない。

 

3-2.ではお金を払う価値があるか?

管理人的には、ほとんどないと考えます。ただなら入れても良いけど、費用をかけるほどの価値はないかなと。

 

4.窒素の管理

窒素充填した場合、補充は必ず窒素でなければならないのか?という質問をよく受けます。結果から言えば空気の補充で問題ありません

 

なぜなら
➀定期的なタイや内圧のチェックの方が圧倒的に重要
➁そもそも窒素100%ではないところに僅かに酸素などが混ざるだけ
➂窒素以外を混ぜたからと言って窒素の効果自体には影響がない
➃窒素が抜けにくいなら多少酸素などが混ざっても窒素以外から抜けていくので問題ない

 

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