日本で欧州タイヤが買えなくなる日

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1.前置き

ちょっとセンセーショナルな記事名ですが、冗談で言っているわけではありません。
日本でもタイヤメーカー各社が続々と値上げをしたのはご存じの方も多いと思います。
値上げは分かるけど何で買えなくなるのよ?というところをお話していきます。

2.春の値上げの理由

まずおさらいですが、なんで春先の値上げが起こったのでしょう。
➀中国のような巨大国家が大量消費をはじめたことで、世界的に原材料の取り合いが始まった。
➁新型コロナウイルスに端を発し、生産そのものの絶対量が足りていない。
➂同じく、物流費が高騰している。 更に中国から出る船は賄賂をもらった荷から先に出るような状況との話まで耳にする。
※アメリカが中国への経済的対抗措置(嫌がらせ)でコンテナを返さないため、中国の輸出用コンテナが足りないとも言われている。
➃社会が正常化を始め、人は動き始めたけれど一度止まったものを元の速さに戻すには時間がかかる。消費が始まっても生産も物流も追いついていない。

3.解消するのか

前章の問題は短期的に解消するのでしょうか?
➀中国の大量消費は日本を含めた資本主義国家にとって物が売れるので望むところ。解消などしないでしょう。
➁生産量は徐々に回復していますが、全く絶対量が足りません。半導体不足などで今後製造機器にも影響が出て悪くなる可能性も残っています。
➂物流は正常化するだけでも少なくとも2~3年はかかると言われています。
つまり、簡単に解消しそうにないということになります。

4.更に悪いことが起きた

ここまででも十分悪い状況にあるのに悪いことというのは続くものです。
➀中国のゼロコロナ政策の継続
中国はいつまでもゼロコロナから舵を切りません。未だにロックダウンなどをしていれば生産や物流が正常化などするわけがありません。中国が生産している原料は不足し高騰しています。
➁ロシアのウクライナ侵攻
言わずと知れたことですがタイヤは石油製品ですので、世界的な原油価格の上昇はタイヤ価格高騰とイコールです。
圧倒的に中国のシェアが大きいもののカーボンブラックなどもロシア製のものが多くあり価格を押し上げています。
ヨコハマタイヤなどもそうですが、ロシアにあるタイヤ工場は相次いで操業停止しています。
➂円安
1ドル100円が130円になんて単純に日本が買うものの値段が3割上がるわけですから言わずもがな。アメリカは利上げ、日銀は金融緩和ですから更に円安が進んでもおかしくないでしょう。
➃投資会社・投資家
投資会社や投資家が悪いといっているわけではありません。儲かるなら買うのは金融としては当然なので、根本的にはモノ不足が悪いわけです。しかし、原材料費値上がりに拍車をかけているには違いありません。

5.モノの値段はどう決まっているか

前章の問題は短期的なものでも解消に数年かかりそうですが、それでも解消しそうなものはまだマシと言えます。ここからお話することは解消しないどころか悪くなっていくばかりの問題です。
ここで中学生の社会の授業を・・・
それは皆さんには必要ないでしょうが、モノの値段って需要と供給で決まっていると教わりましたよね。正常系ならモノの値段って買ってもらえる値段で決まっているわけです。つまり製造物流コストなどに儲けを上乗せしてという風には決まっていません。コストが100円でも1000円で買ってくれる人には1000円で、200円でしか買ってくれない人には200円で売られます。変に思う方もいるかもしれませんが事実です。
例えば皆さんご存じ100円ショップのDAISO、平均年収が45万円ほどのベトナムホーチミンでは約200円ショップです。え?って思うかもしれませんが買う人がそれだけの値段を出しても良いと思えば、それが市場価格になるわけです。ビッグマックの値段で各国の経済状況をみるビッグマック指数はあまりにも有名ですよね。

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6.変化が起きている

先の章で正常系ならと前置きしましたが、通常の生産能力が十分な状態であれば、少しでも儲かるなら安くても様々な人に売ります。利益を上げるのが企業の根幹ですから利ザヤが薄いところでも採算が合えば売るわけです。
では現在のモノ不足の状態ではどうでしょう?全員にいきわたらせるには十分な量が用意できないのですから、「高く買ってくれる人にだけ売る」となります。そしてモノ不足は13億人の中国が大量消費社会の一員になった以上、これからも続くでしょう。
日本では長らく給与水準が上がらないのだから安値が常態化してしまっているのは仕方ないでしょう。しかし、世界的にモノ不足で物価が上がっているのに日本だけそのままというのは無理があります。

7.欧州タイヤの現状

欧州は2割から5割ほどタイヤの価格が上がっています。更に高いタイヤ、儲かるタイヤを中心に製造しています。極端に言えば、「言い値で買ってくれないなら買わなくて結構です」といったわけです。
そして、当然と言えば当然ですが、優先的にお膝元で消費しています。足りないのに「安くしか買ってくれない極東の島国に売ってる場合ではない」わけです。
それ故、タイトルの通り「日本で欧州タイヤが買えなくなる」につながります。

8.今後どうなるか

だいぶ脅かしましたが、幸いにしてトヨタ自動車など巨大自動車メーカーがあるため、新車付けタイヤなど完全に背を向けられることはないでしょう。しかし、市販向けタイヤは現状でも1000本リクエストして100本未満しか入らないような状況が続いているようですし、今後も十分な供給があると思うのは楽観的過ぎるでしょう。
また、今後は日本のタイヤメーカーでも同じようなことが起こる可能性はあります。現にトーヨータイヤは何年も前から北米を中心とした海外に軸足を移しているのは業界では周知の事実です。タイヤに限らず農産物、例えば果物だって一等品は海外に持って行ってしまっています。中国に持っていけば「青森りんご」が1個2500円で売られており、贈答品なら1個何万円で売られているものもあるわけですからね。円安ならなおのことです。

まとめ

・世界的な原材料の高騰、不足が起きている。
・需要に対する生産能力が追い付いていない。
・物流の回復もまだまだ時間がかかりそう。
・円安は今後も続きそう。
・世界標準より物価が安い日本にはタイヤが回ってこない可能性がある。
・手に入らないまではいかなくても更なる値上げの可能性は十分ある。
・円安のせいで、並行輸入品やアジア系の安いタイヤの値段も大幅に上がっている。
何年も前からタイヤに限らず、こういう日が来ることは分かっていました。それが「いつ来るのか?」が分からなかっただけです。そして、いま実際に起こってしまったわけです。冒頭にも述べましたが冗談抜きに欧州タイヤはかなり買いにくくなる可能性があります。現状でもメーカー欠品だらけです。
終始暗い話になってしまいました。しかし、日本には幸いなことにブリヂストンをはじめとした世界トップレベルのタイヤメーカーが幾つもありますから、そこまで悲観することはありません。今後もタイヤの値段は高くなるでしょうけれど、最悪の「手に入らない」とまではいかないでしょう。
当サイトでは今後もできる限り見て頂いている方が良いタイヤをお得に選ぶお手伝いを頑張っていきます。
本当は給料が上がるのが良いんですけどねぇ。そして「頑張れば欲しいものがちゃんと買える」これが一番です。ナビゲーターの会社も給料上げてくれないかなぁ・・・

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