今年追加された普通乗用車用スタッドレスタイヤは主要メーカーではダンロップのみ。そのダンロップの最新スタッドレスタイヤはヨコハマを倒せたのでしょうか?
昨年のおさらい
昨年、公表されている氷上制動試験データからナビゲーターが(勝手に)決めた「2015年一番止まるスタッドレスタイヤ」は「ヨコハマ アイスガード5プラス」でした。一般にはブリザックの最新モデルが最も信頼を勝ち取っていることを考えると少し変化球な結果でした。しかし、その最新モデルブリヂストン BLIZAKK VRXが2013年に発売されたのに比べ、アイスガード5プラスは2015年にマイナーチェンジとはいえ最も重要なコンパウンドチェンジを行っている。後発で最新技術を盛り込んでいるのだから有利であり、言わば後出しジャンケンなのだから勝って当然とも考えられる。しかし、それでも勝てなかったからブリザックが凄かったわけで(今も十分凄いですけど)、例え後出しでも氷上制動試験で勝ったというのは業界的には大きなことだったのです。
2015年一番止まるスタッドレスタイヤを(勝手に)決めたった
ダンロップの最新モデル
今年2016年ダンロップの新世代スタッドレスタイヤであるウインターマックスの「02」が発売された。この最新スタッドレスタイヤが昨年の王者アイスガード5プラスに勝つことが出来たのか否か?今年もデータから見ていきましょう。
公表されている氷上試験
タイヤの試験データはタイヤ公正取引協議会という団体に提出され誰でも閲覧できるようになっています。以下は昨年までに公表されていたデータをまとめたものです。
ブリヂストン
タイヤ銘柄 | ブリザック ヴイアールエックス BLIZZAK VRX |
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車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 5.9℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 14.7m |
タイヤ銘柄 | ブリザック REVO GZ |
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車種 | マークエックス 排気量2,500cc 後輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 215/60R16 |
タイヤ空気圧 | 230kPa |
場所 | ブリヂストン北海道 プルービンググラウンド |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −1.2〜−1.1℃ |
路面温度 | −1.9℃ |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 24.4m |
ヨコハマ
タイヤ銘柄 | アイスガード5プラス ice Guard5 PLUS iG50+ |
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車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 3.9~4.0℃ |
路面温度 | -1.6~-1.4℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.0m |
タイヤ銘柄 | アイスガード トリプル プラス iG30+ |
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車種 | マークエックス 排気量2,500cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 215/60R16 |
タイヤ空気圧 | 230kPa |
場所 | T * MARY 氷上制動試験路 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -2.4 ~ 2.1℃ |
路面温度 | ー1.7 ~ー1.2℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 69.3m |
ダンロップ
タイヤ銘柄 | ウインターマックス WM01 |
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車種 | プレミオ 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 200kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −6 〜 −11℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 29.6m |
タイヤ銘柄 | DSX2 _ |
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車種 | プレミオ 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 200kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −6 〜 −11℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 33.3m |
トーヨー
タイヤ銘柄 | ガリット ギズ GARIT GIZ |
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車種 | カローラアクシオ 排気量1,500cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 東洋ゴム サロマ テストコース |
路面状況 | データなし |
気温 | −6℃ |
路面温度 | −7.6℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 42.3m |
タイヤ銘柄 | ガリット G5 GARIT G5 |
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車種 | カローラアクシオ 排気量1,500cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 東洋ゴム サロマ テストコース |
路面状況 | データなし |
気温 | −6℃ |
路面温度 | −7.6℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 46.8m |
グッドイヤー
タイヤ銘柄 | アイスナビ 6 |
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車種 | プリウス 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 前230kPa 後220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | ー3.7℃~ー5.1℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 42.5m |
タイヤ銘柄 | アイスナビ ZEAⅡ |
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車種 | プリウス 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 前230kPa 後220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | ー3.7℃~ー5.1℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 46.9m |
ミシュラン
タイヤ銘柄 | エックスアイス XI3 |
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車種 | シビック 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 ?名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 士別寒冷地技術研究会 自動車試験場 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −2.2 〜 −4.9℃ |
路面温度 | −2.4 〜 −4.1℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 9.58m |
タイヤ銘柄 | エックスアイス XI2 |
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車種 | シビック 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 ?名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 士別寒冷地技術研究会 自動車試験場 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −2.2 〜 −4.9℃ |
路面温度 | −2.4 〜 −4.1℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 10.45m |
ウインターマックスのデータ
さて本題です。ウインターマックス02と01の比較データです。
まずは見て頂きましょう。
タイヤ銘柄 | ウインターマックス WM02 |
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車種 | データなし 排気量1,200cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | データなし |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 11.6m |
タイヤ銘柄 | ウインターマックス WM01 |
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車種 | データなし 排気量1,200cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | データなし |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.2m |
なんというか・・・ごめんなさい。「データなし」多過ぎですよね。今年のダンロップのデータはまだタイヤ公正取引協議会にアップロードされていないので現状はカタログに記載されているデータしかありませんでした。何とも企画倒れのニオイしかしなくなってまいりました。
しかし、そんなことで挫けるナビゲーターでは御座いません!もう少し頑張ってみます。
それでもデータを見てみる
どこか何とかなるかも知れないのでまずは見られるところから見ていきましょう。
➀ウインターマックス01もデータを取り直しされ初速20km/hでテストされています。
➁ウインターマックス01より12%も早く止まっています。
➂そもそも車種は何でしょうね。排気量1,200ccでタイヤサイズ205/55R16というと思いつくのはフォルクスワーゲンゴルフくらい。車重は1,200~1,300kg程度。この手のテストで輸入車ってあまり見ないので何とも言えませんが1,200ccという低排気量でこのタイヤサイズの車ってナビゲーターが思いつくものが他にありませんでした。
➃➂から比較できそうなのは同程度の車重のシビック、同じタイヤサイズ、初速、タイヤ空気圧でテストしているミシュラン エックスアイス XI3です。
ウインターマックス02は11.6mで止まっています。ウインターマックス01と比べるとやるじゃんと思いきやXI3は9.58mだと?負けてんじゃん・・・と思うでしょ?うん、負けてるね。確かに負けているかも知れない。ナビゲーターの感覚的には勝ってるかなと感じていたんですけどね。
※但し、やっぱりデータが足りない。最も重要と考えられる路面温度データがないのが致命的で信頼性の高い比較は出来ていません。どちらもテストコースは北海道で以下の地図の通りお隣なので気候的には近いはずです。テストを行った時期の問題は残るもののウインターマックス02が負けていると考えるのが妥当なのかもしれない。
蛇足
非公式のデータ話ではありますがミシュランは様々なテストを毎年繰り返し、当然他社製品も比較テストを行っています。そのテストにおいて「他社に負けていない」そうで、故に2012年に発売したXI3のモデルチェンジの必要がまだないと考えているんだそうです。少なくともWM01との比較テストでは負けていないと考えているのでしょう。ただバランス重視のミシュランの設計思想からすると個々の性能の話ではなく「総合的に見て」ということにはなります。
データ以外で見る
掟破りです。完全な反則です。しかし、そんなことはどうでも良いのです。この記事を読んでくれているあなたの役に立てば手段は問題ではない。
ナビゲーターには強い武器があります。この業界にいるからこその役得があったのです。そう試走会に呼ばれて実際に体験してきたのです。
詳しくはコチラ⇒WINTER MAXX 02とBLIZZAK VRX乗り比べてきたので報告
詳細はそちらの記事に任せますが、昨年最も止まったアイスガード5プラスと同程度の性能を持ったブリザックVRXとの比較です。
直進方向の氷上制動性能:VRXよりやや劣る。
氷上コーナリング性能 :限界点はVRXの方がやや高いが、ウインターマックス02は滑り出してからも制御不能になりにくかった。
以上より、ブリザックVRXに勝てないということは自動的に昨年の覇者アイスガード5プラスにも及ばなかったということになりました。
まとめ
・ウインターマックス02がブリザックVRXにも勝てなかったため、2016年-2017年シーズンも「2016年-2017年シーズン一番止まるスタッドレスタイヤはアイスガード5プラス」の連覇となった。
・ウインターマックス02は直線的な氷上制動性能では昨年の覇者アイスガード5プラスやブリザックVRXには及ばないが、かなり近いところまできており、全体で3番目か4番目に良く止まるタイヤ。
・現状の少ないデータでのウインターマックス02とエックスアイス XI3の比較ではXI3に軍配が上がったが、もう少し必要なデータが出てからのお預けとする。
・ウインターマックス02は滑り出してからも制御不能になりにくく立て直しやすい。
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