実際のところスタッドレスタイヤの性能は、普段からタイヤを扱っている人間からしてもよくわからんのです。
確かにそれぞれ違いがあって、その違いも把握しているのだけれど、本当のところ「どいつが一番止まるんだ?」、「効きの差は?」、「効きの持ちの差は?」などなど疑問がある。
なぜ「実際のところ分からん」かというと、メーカー各社が同じ物差しで測定してくれないからだ。本来は低燃費タイヤの規格のように規格を統一し、物理的な値を同条件で測定して表記すべきなのだ。
しかし、条件は多く、氷の温度、氷の状態、気温、車、タイヤサイズ、空気圧、制動速度など様々なわけである。そして、転がり抵抗係数のような物理的な数値の算出でなく、極端に言えば各社が得意な条件で「何メートルで止まったぞ」と自画自賛しているに過ぎない。それをタイヤ公正取引協議会に届けカタログやWEBなどで公表するわけだ。そりゃ本当のことも分かるわけがないし、比較も出来ない。そんな中、今年は少し面白いことがあったので投稿してみる。
公表されている氷上試験
まずザックリ見て頂きたい。見ながら何が面白いのか考えて欲しい。
ブリヂストン
タイヤ銘柄 | ブリザック ヴイアールエックス BLIZZAK VRX |
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車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 5.9℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 14.7m |
タイヤ銘柄 | ブリザック REVO GZ |
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車種 | マークエックス 排気量2,500cc 後輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 215/60R16 |
タイヤ空気圧 | 230kPa |
場所 | ブリヂストン北海道 プルービンググラウンド |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −1.2〜−1.1℃ |
路面温度 | −1.9℃ |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 24.4m |
ヨコハマ
タイヤ銘柄 | アイスガード5プラス ice Guard5 PLUS iG50+ |
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車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 3.9~4.0℃ |
路面温度 | -1.6~-1.4℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.0m |
タイヤ銘柄 | アイスガード トリプル プラス iG30+ |
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車種 | マークエックス 排気量2,500cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 215/60R16 |
タイヤ空気圧 | 230kPa |
場所 | T * MARY 氷上制動試験路 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -2.4 ~ 2.1℃ |
路面温度 | ー1.7 ~ー1.2℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 69.3m |
ダンロップ
タイヤ銘柄 | ウインターマックス WM01 |
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車種 | プレミオ 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 200kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −6 〜 −11℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 29.6m |
タイヤ銘柄 | DSX2 _ |
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車種 | プレミオ 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 200kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −6 〜 −11℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 33.3m |
トーヨー
タイヤ銘柄 | ガリット ギズ GARIT GIZ |
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車種 | カローラアクシオ 排気量1,500cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 東洋ゴム サロマ テストコース |
路面状況 | データなし |
気温 | −6℃ |
路面温度 | −7.6℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 42.3m |
タイヤ銘柄 | ガリット G5 GARIT G5 |
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車種 | カローラアクシオ 排気量1,500cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 東洋ゴム サロマ テストコース |
路面状況 | データなし |
気温 | −6℃ |
路面温度 | −7.6℃ |
試験速度 | 40km/h |
制動距離 | 46.8m |
グッドイヤー
タイヤ銘柄 | アイスナビ 6 |
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車種 | プリウス 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 前230kPa 後220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | ー3.7℃~ー5.1℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 42.5m |
タイヤ銘柄 | アイスナビ ZEAⅡ |
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車種 | プリウス 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 前230kPa 後220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | ー3.7℃~ー5.1℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 30km/h |
制動距離 | 46.9m |
ミシュラン
タイヤ銘柄 | エックスアイス XI3 |
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車種 | シビック 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 ?名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 士別寒冷地技術研究会 自動車試験場 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −2.2 〜 −4.9℃ |
路面温度 | −2.4 〜 −4.1℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 9.58m |
タイヤ銘柄 | エックスアイス XI2 |
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車種 | シビック 排気量1,800cc 前輪駆動 ABS作動 ?名乗車相当 |
タイヤサイズ | 205/55R16 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 士別寒冷地技術研究会 自動車試験場 |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | −2.2 〜 −4.9℃ |
路面温度 | −2.4 〜 −4.1℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 10.45m |
おわかりいただけただろうか
ここまで見る気をなくす表を見て頂き、ありがとうございました。なんともバラバラで酷いデータ群だ。まったくもってけしからん。車種はおろか制動試験の速度すら合っていない。まるでメーカー各社が他社と比べられないようにしているようだ。
しかし、面白いと書いたのは、いつもバラバラのデータにある程度の共通点があったためだ。既に気が付いた方もいるかも知れない。あまりに見る気が失せる統一感のないデータのため気付かなかった方もいるかも知れない。
それでは並べてみましょう。
タイヤ銘柄 | ブリザック ヴイアールエックス BLIZZAK VRX |
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車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 5.9℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 14.7m |
タイヤ銘柄 | アイスガード5プラス ice Guard5 PLUS iG50+ |
---|---|
車種 | ノア 排気量2,000cc 前輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 195/65R15 |
タイヤ空気圧 | 240kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 3.9~4.0℃ |
路面温度 | -1.6~-1.4℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.0m |
アイスガード5プラスがブリザックVRXを超えている
おわかりいただけだろう。車種やタイヤサイズ、制動試験の速度、試験場所など多くの点が共通しているのである。しかも、業界トップでスタッドレスタイヤで最も信頼の厚いブリザックを擁するブリヂストンの最新タイヤVRXより、アイスガード5プラスの方が短い制動距離で止まっているのだ。今年ヨコハマはアイスガード5のパターンはそのままにコンパウンドを変更するマイナーチェンジを施した。実は関係者の話からヨコハマはかねてよりブリヂストンが新製品を出した次の年ないしは、その次の年に新製品をリリースしようと調整している節がある。「後出しでも良いのでトップを超えたデータを出したい」と考えているのかもしれない。故に2013年にブリヂストンによりテストされた条件にぶつけてきたと考えられる。細かい条件はお互い自社の得意な条件で行ったとしても、興味深い結果でVRXを超えたからこそ比較できる条件のデータを公表したともとれる強気なデータだ。
そう言えば、今年ヨコハマタイヤに呼ばれて行ったアイスガード5プラスの試乗会の結果でも「ある意味VRX超えたかもわからんね」なんてことをまとめに書いたけど、その裏付けがデータでも示されたと言っても良いのかな?というわけで、当サイトの見解としては、2015年時点で一番止まるスタッドレスタイヤはアイスガード5プラスだ。
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「2015年一番止まるスタッドレスタイヤを(勝手に)決めたった」への6件のフィードバック