溝もある見た目も大丈夫な「危険なタイヤ」とは?

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先日、お客様から外したタイヤを見て、これは危ないなと感じたケースです。年に何度か見るケースですが、ユーザーとして異常が発見しにくい「ゴム劣化」の例としてお見せします。

 

タイヤ交換をすべきタイミングは2つ

主に下の2つのケースがあります。

摩耗が進んでスリップサインが露出しそうな場合

ゴムが劣化した場合

 

今回はゴムの劣化が主たる問題となりますが、摩耗についても軽く触れていきます。

 


摩耗が進んでスリップサインが露出しそうな場合

これは見た目だけで判断可能で明白です。こうなったらアウト。

 

slipSign

 

1箇所でもスリップサインが繋がったタイヤでの公道走行は法令で禁止されていますから、その前に交換しましょう。法令は置いておいても、スリップサインは濡れた路面で急激に制動距離が伸びるラインなので、あなたと周りの方の安全の為に交換しましょう。勿論その安全のための法令ですからね。

 

ゴムが劣化した場合

まず劣化には大まかに2つの問題があります。
ひとつは靴底に当たるトレッドの劣化で、もうひとつは空気のケースであり車体を支える骨格構造のゴムの劣化です。では、これら2つの問題について見ていきましょう。

 





今回問題のタイヤを例に見ていきます

今回危険な例に挙げるのは使用開始から約6年、製造からは約7年で交換に至ったこのタイヤです。因みにこちらはミシュランのエナジーセイバーで非常に摩耗に強いので年間走行距離が1万km以下だと5年経っても溝が沢山残っているケースが多いタイヤです。

 

周クラック

トレッドの劣化

靴底にあたるトレッドの劣化は利きを落とします。静粛性能が落ちたりするので不快感も出ますが、それは劣化に伴ってゆっくりとなので慣れてしまいますし、それ以外の問題は普段はあまり大きく問題を感じません。ただ例えば、「子供が飛び出してきたというような緊急時」これが問題です。トレッドが劣化していると「通常なら止まれていたのに…」といったことになりかねません。あまり無理なタイヤの延命はお勧めしません。溝があるとどうしても勿体なく思えてしまいます。しかし、大手メーカーサイトでも「使用開始後5年以上経過したタイヤについては、継続使用に適しているかどうか、すみやかにタイヤ販売店等での点検を受けられることをお奨め致します」と書かれているように、5年経過したら交換の検討が推奨されています。

 

ブリヂストン公式サイト「長期経過タイヤの点検・交換」

 

さて今回のタイヤのトレッドはこのようになっています。

 

トレッドの痛み2

トレッドの痛み

 

スリップサインまではまだまだで、ヒビは多いものの致命的ではないように思えます。しかし、ゴムが劣化し硬化したことで見た目にも問題があることは分かります。まず溝の中にクラックが入っています。トレッドの中で最もゴムが薄く弱い部分と言えるので良い傾向とは言えません。またブロックの角のゴムが細かく千切れて、のこぎりのようにギザギザになっています。ゴムの硬化がかなり進行していることを示していて、急ブレーキを踏めばゴムが負荷に耐え切れず千切れ飛びながら止まることとなり、緊急制動距離は大幅に伸びているので、やはり危険と言えるでしょう。劣化したタイヤであっても普段は問題にならないのですが急ブレーキを要するようなときにはじめてタイヤの真価が問われます。やはりこの様な状態になっていたら、交換した方が良いでしょう。但し、これだけでは「致命的」とまでは言えません。

 





骨格ゴムの劣化

タイヤは高圧の空気を入れておくためのケースでもあります。空気を入れるメリットは乗り心地や軽量化など多くの意味があります。普段意識しませんがタイヤには大抵は大気圧の倍以上の圧力の空気が充填されています。これにより重い車を支えたりといったタイヤの基本的な機能を実現しているわけです。
では問題のタイヤです。

 

タイヤ外観

 

全体を見ても大きな問題はなさそうです。しかし、問題がないならとりあげないわけです。
というわけで詳しく見ていきましょう。

 

周クラック

周クラック-ストレスかけた

 

一見問題なさそうに見える画像の点線を入れた部分ですが、少し変形させてあげると非常に深いクラックが現れます。ヒビを見やすくするために変形させているだけで、ヒビは元々そこに存在し別に無理にヒビ割れさせたわけではありません。それ以前に手で力を入れた程度でヒビが広がったりする状態なら、1トンを超える車を支えるタイヤとしては失格です。

 

このクラック、タイヤ側面の骨組みで、放射線状に入っているナイロンコードに達していました。このコードは鉄筋コンクリートで言えば鉄筋の部分でコンクリートに深いヒビが入って鉄筋に達していると言えば、恐ろしさが伝わるでしょうか?本来外部と接触しないはずの鉄筋が雨などにより錆び、強度が大幅に低下し耐荷重が落ち危険にさらされていることが分かるでしょう。重さ1トンを超える車体を支えるタイヤでも同じことが言えます。
元々、高荷重に耐え、内部からの高い空気圧に耐えているタイヤですが、これから暑くなると高熱になったアスファルトや強烈な直射日光などで特にタイヤには厳しい環境になります。骨格が弱っているタイヤで高速走行などすれば問題が起こってもなんら不思議はありません。むしろ問題が起こらないでいる現状は、運が良いだけとさえ言えます。最悪の場合、バーストなんて怖い目にあわないために安全点検はしておきましょう。

 

点検なんてよく分からないけど気になったあなた。チェックしてもらうだけならタダだから、エアチェックついでにタイヤショップに立ち寄ってみては?


最後にこんな動画をどうぞ

 

流石にここまでひどいのは、ほとんどトラックなどの大型車ですけどね。

 

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