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ミシュラン新スタッドレスのなるほど新構造

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2017年-2018年シーズンに新発売されるミシュランの新スタッドレスタイヤ「X-ICE XI3 PLUS(エックスアイス エックスアイスリー プラス)」について、「なるほどその手があったか!」という実にミシュランらしい新コンパウンドの情報をキャッチしました。

 

新たな添加素材を加えた新コンパウンド

今回のモデルチェンジはパターン変更のないマイナーチェンジ的な変更であることは以前にお伝えしました。参考)ミシュランの新スタッドレス情報
その際「吸水性能と柔軟さの持続性を高める新素材」がコンパウンドに添加されるとお伝えしましたが、一部正確ではない情報だったようなので詳細を後述していきます。

 

なぜ氷で滑るのか

スタッドレスタイヤの効きの構造を理解するために、氷上で滑る機構をごく簡単に説明しておきます。
氷は表面が滑らかなため滑ってしまいます。しかし、むしろ問題なのが氷にタイヤが接触すると、表面が僅かに解けてミクロの水膜が出来、これがタイヤと路面の摩擦を極小化するために滑ると言われています。タイヤと路面の間に薄い水膜が出来てしまう言わばミクロのハイドロプレーニング現象です。そのため近年のスタッドレスタイヤの開発は各メーカーとも水膜除去に大きな力を注いでいます

 

従来の代表的な添加素材

➀ダンロップのテトラピックなどのグラスピック素材は引っ掻き効果を狙ったものでしたが、現在は採用されていません。
➁トーヨーの微粉砕クルミ殻は引っ掻き効果を狙ったもので現在も採用されています。
➂ヨコハマの吸水カーボンは吸水効果、吸水バルーンと吸水ハニカムシリカは吸水効果と引っ掻き効果を狙ったものでした。最新モデルでは主に吸水効果を狙った吸水バルーンとエボ吸水ホワイトゲルのみの採用です。
過去にはグッドイヤーもダンロップのようなガラス状引っ掻き素材を添加していました。

 

表面を多孔質構造にすることで効く

まずは左図を見て頂きましょう。この図はベースとなるコンパウンドに球状の添加素材「Mチップ」が混ぜられていることを模式的に表したものです。この球状の添加素材はベースコンパウンドとは別の素材で出来ており、表面に露出すると溶けてなくなります。この溶けた後の穴「細孔」がポイントで添加素材そのものが吸水効果を発揮するわけではなく、細孔の水を吸う特性が吸水性能を発揮します。細孔が表面にたくさん存在するとスポンジが水を吸うように氷表面の水膜を除去する効果を発揮するのです。この表面の吸水構造は一般にスタッドレスタイヤで最も高い氷上性能で信頼を得ているブリヂストンのブリザックの発砲ゴムに似ています。しかもブリザックと違ってコンパウンド内部はしっかり詰まった状態なのでトレッド剛性は保たれるので高い走行性能も維持します。

※沢山の細孔が空いた物体を多孔質体と呼び、多孔質体は細孔に水を取り込むと化学的に安定するため周囲の水を取り込みます。

 

表面「だけ」を多孔質構造にすることで走行性能を高める

このコンパウンドの肝は添加素材が表面に露出するまでは内部の構造物としてトレッド剛性を保ってくれることです。
似たような多孔質構造により水膜除去をして効く構造のスタッドレスタイヤにブリヂストンのブリザックとヨコハマのアイスガードがあります。これらは氷上で非常に高い効きを発揮する一方で、内部までスポンジ状の構造を持っているためトレッド剛性が弱く、どうしても柔らかい走行性能になりがちで摩耗も早い傾向にあります。
これに対し、ミシュランの「XI3 PLUS」は表面に露出するまでは添加素材がトレッド内部に存在するため、ほとんど剛性を落とすことがありません。そして表面にのみ多くの細孔を存在させて、効果的に水膜除去性能を発揮するという実に合理的な構造をしています。ミシュランのタイヤ全般に言えることですが、何かを得れば何かを落とすことを良しとせず、バランスを重視した安全性能を持ったタイヤになっており、「XI3 PLUS」もより高い氷上性能を目指したが走行性能を犠牲にすることはしていないのです。

 

他メーカーとの性能比較

現状では細孔の密度も大きさも分からず、氷上性能の比較データもないのでブリザックやアイスガードとの比較はできません。実は「XI3 PLUS」の走行会にも呼んで頂いているので追って報告します。







まとめ

➀新たな添加素材により吸水性能を発揮して氷上性能を高めています。
➁表面に露出した添加素材が溶けてなくなった場所に出来る細孔が氷表面の水膜除去をして効きます
内部に存在する添加素材は構造物としてトレッドを支えるため高い走行性能を持ちます。
 そのため速度記号もHまたはTと夏タイヤ同等か近い性能です。
➃他メーカーとの比較は今後に期待してください。

 

まだ夏も来てないというのにスタッドレスタイヤの話題です。この業界も毎年前倒しされていってナビゲーターのおじさんも困っちゃいます。

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ヨコハマタイヤ値上げ情報

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ヨコハマタイヤの製品の値上げが発表されました。

 

いつから

2017年4月1日から

 

どの程度

出荷価格で以下の数字です。
乗用車用夏タイヤ:6.0%
バン用夏タイヤ、冬タイヤ:6.0%
ライトトラック夏タイヤ、冬タイヤ:7.0%
トラック・バス夏タイヤ、冬タイヤ:7.0%

 

理由

合成ゴムなどの石油化学系原材料の価格の高騰加え、天然ゴム相場も高い水準なため、企業努力だけで吸収できなくなったとの発表をしています。







まとめ

➀以前は実質的に低価格帯の値上げでしたが今回は全体的な値上げです。
➁値上げ前に買い込むショップがあるでしょう。
 ・買い込んだ商品を据え置き価格で他社との差別化に使う。
 ・高くなる前に買った分、値上げ後に利ザヤを稼ぐ。
➂3月中旬頃から一部商品、一部サイズで欠品が起こる可能性があります。
 ・例年欠品しがちなのはBluEarth RV02の195/65R15、205/60R16あたりです。
 ・アクアの交換期が来ているので175/65R15あたりも危ない。
➄市場でも遅くともゴールデンウイークくらいには値上げが始まると考えられます。
➅他メーカーも後追いで値上げの可能性があります。

 

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