昨年もやりましたスタッドレス勝手に決めたったシリーズの第2弾。今回はSUV編です。
スタッドレスタイヤの性能は普段からタイヤを扱っている人間からしても分かりにくいのは昨年も申し上げたところ。長年タイヤに携わっているのでそれぞれの違い、特徴は把握しているのだけれど、本当のところ「どいつが一番止まるんだ?」、「効きの差は?」、「効きの持ちの差は?」などなど疑問がある。今回は「どいつが一番止まるんだ?」に主眼を置いた話をします。
氷の温度、氷の状態、気温、車、タイヤサイズ、空気圧、制動速度など全ての要素を揃えて検証するのは難しい。とはいえ転がり抵抗係数のような物理的な数値の算出してくれれば、各社のカタログ値も「何メートルで止まったぞ」という自画自賛に終わらないんですけどね。しかし、どうも他社との比較を良しとしないので(法的な問題もあります)難しいところですが公表値をまとめて考察するので参考にしてもらえたらと思います。
そうそう、こんな状況ですが今年も「あるメーカー」が「またやってくれた」ので注目してみましょう。
公表されている氷上試験
以前からタイヤナビゲーターのサイトを見て頂いている方にはピンときた方もいるかも知れませんが、「どのメーカー」が何を「またやってくれた」のか見ていただきましょう。
ブリヂストン
タイヤ銘柄 | ブリザック DMV2 |
---|---|
車種 | CR-V 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 102Q |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 7.8℃ |
路面温度 | -1.2℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 12.26m |
ヨコハマ
タイヤ銘柄 | iceGUARD SUV G075 |
---|---|
車種 | CR-V 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 102Q |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 9.1℃ |
路面温度 | -1.2℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 11.9m |
ダンロップ
タイヤ銘柄 | WINTER MAXX SJ8 |
---|---|
車種 | ヴァンガード 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -1〜-3℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 14.3m |
グッドイヤー
タイヤ銘柄 | ICE NAVI SUV |
---|---|
車種 | CX5 排気量1,997cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 岡山国際 スケートリンク |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -2.0℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.0m |
ミシュラン
タイヤ銘柄 | LATITUDE X-Ice XI2 |
---|---|
車種 | プラド 排気量4,000cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 265/65R17 112T |
タイヤ空気圧 | 200kPa |
場所 | データなし |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -2.7〜-3.0℃ |
路面温度 | -2.3〜-2.5℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 9.95m |
おわかりいただけただろうか
重要なデータが揃えられていない試験というのは何とも不快ですがSUV用は普通乗用車用に比べればかなりマシですね。制動速度は揃っているしミシュラン以外は中型SUVでタイヤサイズも225/65R17で揃えられている。しかし、ナビゲーターが最も重要と考えている路面温度がそろっていないこと。本来から言えば1℃違うだけでも結果が大きく変わってしまうであろう氷の温度(路面温度)にばらつきがあったり、公表されていないメーカーすらあるのは比較する大きな障害なんですが…
しかし、待って下さい。今回は分かりやすいのであなたも既に気付いていることでしょう。スタッドレスタイヤの最高峰といったイメージを持つ方も多く信頼性の高いブリザックと試験方法をガッツリぶつけてきたメーカーがあります。そうまたヨコハマです。
※なぜ氷の温度が大切かを簡単に説明すると「水膜」が関係しています。氷の温度が高ければタイヤが触れた瞬間にミクロの水膜が出来これが「滑る」大きな要因となります。故に各社何かしらの方法でスタッドレスタイヤによる水膜除去対策をしているのです。昔アイスガードのTVCMで「乾いた氷は滑らない」というキャッチコピーがありました。イメージしてください。乾いた鉄板の上でブレーキをかけた場合と、鉄板の上に薄く油を塗った場合、どちらが滑るかは今あなたの想像された通りです。氷点下の氷は乾いた鉄板のようなものですが、タイヤが触れた瞬間「溶けて」油を塗った鉄板のようになります。より水膜除去が得意なタイヤは温度の高い氷でも優秀な氷上性能を発揮します。一方、氷上が得意でないタイヤは氷の温度を低くしてあげれば「期待される効き」のデータが取れることになります。
それでは一応並べてみましょう(既に並んでいましたね)。
タイヤ銘柄 | ブリザック DMV2 |
---|---|
車種 | CR-V 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 102Q |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 7.8℃ |
路面温度 | -1.2℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 12.26m |
タイヤ銘柄 | iceGUARD SUV G075 |
---|---|
車種 | CR-V 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 102Q |
タイヤ空気圧 | 210kPa |
場所 | 軽井沢風越公園 アイスアリーナ |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | 9.1℃ |
路面温度 | -1.2℃ |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 11.9m |
アイスガードがブリザックを超えている
車種やタイヤサイズ、制動試験の速度、試験場所など多くの点が共通しているのである。しかも、業界トップでスタッドレスタイヤで最も信頼の厚いブリザックを擁するブリヂストンのDM-V2より、iceGUARD SUV G075の方が1割ほど短い制動距離で止まっているのだ。普通乗用車用スタッドレスタイヤに続いてSUV用タイヤでも試験条件をぶつけてくるとは、ちょっとニヤニヤしちゃうよね。各社このくらい闘争心むき出しで競ってほしいものですね。
因みにヨコハマの担当営業に「試験条件ぶつけましたね」と話をしたところ「偶然ですよ(笑)」と確信犯の笑顔でとぼけていました。
その他の比較
縦方向はヨコハマとブリヂストンが強い
ブリヂストン、ヨコハマともに一般的に滑りやすく厳しいと考えられる高めの路面温度であって、20km/hという低速においてでも他メーカーにこれだけの差をつけた短い距離で止まっているのは流石。
ウインターマックスSJ8とアイスナビSUV
ここで少し車重を見てみます。排気量とグレードから考えるとCR-Vは約1,550kg、ヴァンガードは約1,600kg、CX-5は約1,500kg(CX-5に2Lの4WD設定がないので排気量基準)と考えられます。一般に軽い方が制動距離は短くなる(今回のケースでは重いとより大きな摩擦熱が発生し滑る要因の水膜が多くできる)ので、そういった意味ではブリヂストンとヨコハマは中程度の条件で試験をしていることになります。そしてグッドイヤーは最も軽い車で試験し、ダンロップは最も不利な条件で試験をしている。100kg(7%)ほどの重量差だがバカにならない。路面温度がないので今回のデータだけでは比較のしようがないが、実際にはデータ通りグッドイヤーの方が効くといった結果にはなりそうにないことだけは言っておきます。
ダンロップ
タイヤ銘柄 | WINTER MAXX SJ8 |
---|---|
車種 | ヴァンガード 排気量2,400cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 住友ゴム工業(株) 名寄タイヤ テストコース |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -1〜-3℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 14.3m |
グッドイヤー
タイヤ銘柄 | ICE NAVI SUV |
---|---|
車種 | CX5 排気量1,997cc 四輪駆動 ABS作動 2名乗車相当 |
タイヤサイズ | 225/65R17 |
タイヤ空気圧 | 220kPa |
場所 | 岡山国際 スケートリンク |
路面状況 | 氷盤 |
気温 | -2.0℃ |
路面温度 | データなし |
試験速度 | 20km/h |
制動距離 | 13.0m |
LATITUDE X-ICE XI-2
今回の趣旨では比較はまことに難しい。
まとめ
どいつが一番止まるんだ?
DM-V2は2014年発売なので、後発なので勝って当然と言われるかもしれませんが、2016-2017年シーズンでは最も止まるスタッドレスタイヤの称号はヨコハマ iceGUARD SUV G075に与えて良いでしょう。
当サイトでの勝手に氷上性能格付け
iceGUARD SUV G075 > BLIZAKK DM-V2 > LATITUDE X-ICE XI2 ≧ WINTER MAXX SJ8 > ICE NAVI SUV
※今回の比較だけでは分からないけど、様々なタイヤの試乗、自家用車や社用車などでの使用、お客様からの声など様々な要素からナビゲーターが勝手に付けたものです。
「2016-2017年一番止まるスタッドレスタイヤを(勝手に)決めたった SUV編」への1件のフィードバック