ミシュランの最新スタッドレスタイヤ「X-Ice3 Plus(エックスアイス スリー プラス)」の試乗(試走)会に行ってきました。
実は中々試乗の機会のないミシュランのスタッドレスタイヤですが、今年2017年は待望の試乗会が開かれ招待して頂きました。どうやらミシュランが業界向けにスタッドレスタイヤの試乗会を行うのは初めてなようで、担当営業は「やっと実現した」と感動しきりでした。
実は試乗会自体はお盆前に行ってきたんですが、真夏の暑いさなかにスタッドレスタイヤの試乗結果に興味がある方も少ないでしょうということで温めていました。ちょっと仕事の都合で長期出張に行っていたため記事をあげづらい環境にあったことも手伝って大分遅くなってしまいました。ただでさえ忙しいのに出張とか仕事増えます。貧乏暇なしですね。
目次
1.イベントプログラム
2.試走条件
3.氷上走行結果
4.アスファルト上走行結果
5.まとめ
1.イベントプログラム
➀座学(商品説明)・・・商品説明のため割愛
➁氷上走行
➂アスファルト上走行
これらを数チームに分けてローテーションでこなします。ナビゲーターは上から順番でした。
2.試走条件
2-1.使用車、比較タイヤ、環境など
- 使用車種 :
- 50系プリウス
- 試走タイヤ :
- X-Ice3 Plus
- 比較タイヤ :
- ブリヂストン ブリザック VRX(以下VRX)
- タイヤサイズ:
- 195/65R15
- 空気圧 :
- 自動車メーカー標準空気圧(前250kPa 後240kPa)
- 路面状況 :
- 氷盤(室内スケートリンク)
- 路面温度 :
- -2℃~0℃
ミシュランのスタッドレスタイヤの得意な温度域と言えば低温というのが業界の常識であり、当然試走会も有利な温度条件にしてきたかと思いきや少し高めの温度でした。しかもナビゲーターは氷上走行がプログラム2番目だったので、先の組の車が走った後であり氷の上にやや水が浮いている状況でした。業界の常識からすればブリヂストンのスタッドレスタイヤの得意な環境でのガチンコ勝負ということになります。
2-2.コース
➀加速・・・完全停止から15km/hまで加速しました。
➁制動・・・15km/hからフルブレーキング(ABSあり)で制動距離を比較しました。
➂旋回・・・その名の通り左旋回しながら車両が振り出されないか、舵角調整の必要性の有無などを検証しました。
➃スラローム・・・出来る限り等速でハンドリング追随性や車両の横滑りや安定感などを検証しました。
上記を2周します。
2-3.速度計測器
ナビゲーターが今回の試走会で最も感激したのは速度計測器です。この手の試走会では指定ラインまでに、車両の速度メーターの速度で指定速度(例えば15km/h)にしフルブレーキをして制動距離を比較します。それがナビゲーターはいつも不満でした。というのも車両の速度メーターというのは駆動輪の回転数から速度を出しており実際に車が走行している速さではありません。氷上で空転しているタイヤの回転数から算出されている速度メーターなど何の参考になるのかと考えているわけです。それでも十分な加速距離があれば問題はないのでしょうが、屋内スケートリンクでは十分な加速距離がないため大抵は実測とメーター速度にはズレがあるのです。
さて、そこで今回のミシュランの車両を見て感動したのは車両の後方に駆動系と無関係の速度測定用の車輪が装着され、その車輪の回転数から算出された速度が運転席に取り付けられたメーターに表示されます。これにより実際の速度を見て制動比較をすることが出来たことでした。これがあるべき姿なのですがこれまでどのメーカーの試乗会でも採用されなかったことが、ミシュランでは初めての試走会から行われたわけです。流石、職人気質の会社だなとニヤリとしてしまいました。
※無理やり作った画像は撮影不可なためです。
3.氷上走行結果(比較試験)
➀制動
・まず15km/hへの到達距離に感心しました。明らかにブリヂストンのブリザックVRXより短い距離で安定して15km/hに到達したと感じました。
・制動距離は「X-Ice3 Plus」が8mほどで「VRX」は9mほど、なんとミシュランに軍配が上がりました。
➁旋回
・「VRX」は限界を超えたら急に外に振り出されたのに対し、「X-Ice3 Plus」は明らかな限界点が急に来るというわけではなく増速していくと段々滑るので走りやすいと感じました。
・「VRX」は途中まではほとんど滑らず、滑り出すまで粘り強かったので多少アクセルを踏んでしまった可能性を完全に否定することはできません。しかし、2周とも同様の結果だったので旋回性能もX-Ice3 plusに軍配が上がったと言って良いでしょう。
➂スラローム
・セッティングが緩かったので両者ともあまり横滑りしませんでした。
・2周目は少し増速してみましたが、やはりセッティングが緩い。室内なのであまり無茶も出来ません。
・「X-ICE3 Plus」も「VRX」も素晴らしい旋回性能を見せてくれました。
4.アスファルト上走行結果
・非常に安定した走行安定性能でした。
・レーンチェンジや右左折時もほとんどふらつきなく夏タイヤと同等の走行安定性能でした。
・加速時もレスポンスが早く、踏んだら踏んだなりに加速してくれます。
・制動についてもスタッドレス特有のブロックの倒れこみで制動距離が伸びる感覚がほとんどありません。
・市街地走行なので高速走行は確かめられませんでしたが先代と同等程度の高速性能はありそうです。
・走行音も非常に静かで多くのスタッドレスタイヤにあるジャーッとかウォーンとかいう不快な音がほとんどありません。
5.まとめ
今回の試乗会から言えること
・氷上加速・・・スタートしてかなり早くから食いつき、安心感のあるスタートができました。
・氷上制動・・・非常に高い性能を発揮してくれました。トップクラスの氷上制動性能です。
・氷上旋回・・・非常に高い性能を発揮してくれました。ゲレンデへの山道でも安心でしょう。
・走行性能・・・乾燥路走行はミシュランの真骨頂で夏タイヤ同様の走行性で高速も安心です。
今シーズン最もオススメのスタッドレスの一角で、準降雪地域在住のナビゲーターイチオシのスタッドレスタイヤです。
今回の試乗以外のデータで予測できること
ブリザックの最新モデルVRX2はVRXより10%制動性能が上がっているデータが発表されています。つまりブリザックの最新モデルはX-ICE3 plusと同等の制動性能と考えられます。
X-Ice3 plus(エックスアイス スリープラス)の相対評価ゲージなど
蛇足
この手の試乗会(試走会)では必ず言われることですが、なぜか「主催メーカーのタイヤが一番良い結果が出る」という都市伝説(笑)です。ナビゲーターもかなりの数の試乗会に招待して頂いていますが、少なく見積もっても8割は主催メーカーに有利な結果が出ています。今回もまた主催メーカーに軍配が上がる結果となりました。
さて、では今回の試乗会の結果は妥当だったかどうかを考える必要があります。
➀環境は妥当だったのか?
⇒氷の温度は極端に低く設定されていることもなく、不当にミシュランに有利な条件を作り出しているわけではありません。どちらかというと高めの温度設定であることを考えると一般にはブリザックに有利と言われる条件であったため妥当と言って良いでしょう。(正直主催メーカーに有利な条件であったとしても「主催メーカーなんだから良いじゃない」と思ってしまう私もいます)
➁比較対象が妥当か?
⇒最新のVRX2と比較すべきですが対象がVRXなのは仕方ないところでしょう。試乗会の時点では未発売ですし、何となく最新モデル同士を比較しない業界的な大人の事情があるように感じます。一般に最も高い氷上性能を有していると言われるブリザックとの比較は理想ではないものの概ね妥当と言えるでしょう。
➂スペシャルでないか?
⇒これも業界ではよく言われることですが特別仕様のタイヤを使用している可能性がないとは言えません。タイヤ側面の型式を表す文字列などを写真に収めて市販品と比較したいところですが、撮影は許されていないので難しいところでしょう。結局のところメーカーを信頼する以外にありません。勿論ミシュランは信頼できるメーカーです。
これらに加え長年の小ナビゲーターの経験や周囲の関係者の高い評価から判断しても、素晴らしいスタッドレスタイヤであり妥当な結果と言って差し支えないでしょう。
245/40R19があればいいのに・・・。