2017年-2018年シーズン新発売スタッドレスタイヤ【1】で少し触れましたが、この冬トーヨーも新たなスタッドレスタイヤを市場投入します。メインのGARITは変更ありませんが、トーヨーの代名詞ともいえるミニバン専用タイヤのトランパスのスタッドレスタイヤ「Winter TRANPATH TX(ウィンタートランパス・ティーエックス)」です。
技術的な特徴
鬼クルミ
引っ掻き効果を期待して添加されています。他社が引っ掻き系の素材を添加するのをやめていく中で少々の時代遅れ感は否めないところでしょう。
他社が引っ掻き系添加材の使用を中止したのは期待される効果に限界を感じたことと、素材のほとんどがガラス系だったため環境への配慮などで中止された背景があります。鬼クルミも前者についてはやはり効果が限定的ですが、後者については天然素材であるため環境負荷がほとんどないということが強みとなって採用され続けているのでしょう。
NEO吸着ナノゲルゴム
鬼クルミの効果だけでは氷上性能に限界がありました。一方でブリヂストンのブリザックで初めて採用された積極的な氷上の水膜除去が氷上性能への効果が高いことが分かり他社でも採用されました。他社からやや遅れましたがトーヨーも吸着ナノゲルゴムに投入された吸水カーボニックセルの形で導入しました。その効果を上昇させたのがNEO吸水カーボニックセルを含むNEO吸着ナノゲルゴムで本タイヤにも採用されました。
3Dダブルウェーブグリップサイプ
サイプと呼ばれる細かな横溝が多くの角を生み出し、これが多いほど高いエッジ効果を発揮します。しかし、サイプが多ければブロックが倒れこんで十分なエッジ効果が得られなかったり、剛性を失うことで走行性能が大幅に低下したり、偏摩耗を引き起こしたりします。多くのサイプを配置したいがこれらの問題を引き起こしたくないというジレンマの対策として、ブロック壁面に半球状の凹凸を配置してお互いを支え合うようにし、サイプの数や形状を最適化しています。
スパーハイターンアップ
カーカスの巻き上げ部分をトレッド付近まで延長することでサイドウォールの剛性を確保しています。これによりミニバンやハイト系自動車で不安を感じやすいカーブや高速道路でのレーンチェンジのふらつきを抑えたしっかりとした走りが出来ます。
トリプルトレッド構造
経年劣化の抑制をサポートするソフトキープコンパウンドをベースに、氷に強いスーパーソフトコンパウンドをインサイド側に配置し、アウトサイドには剛性高めのソフトコンパウンドを配置することで効きと走行性能を両立させています。
先代からの性能アップ
WINTER TRANPATH MK4α(ウィンタートランパス エムケーフォーアルファ)からの性能アップは以下です。
氷上制動
氷上制動比較試験 | |
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タイヤ銘柄 | ➀Winter TRANPATH TX (ウィンタートランパス ティーエックス) ➁Winter TRANPATH MK4α (ウィンタートランパス エムケーフォーアルファ) |
タイヤサイズ | 195/65R15 91Q |
ホイールサイズ | 15x6.0J |
試験車 | ノア(4WD,ABSあり) |
タイヤ空気圧 | 前240kPa,後240kPa |
乗車人数 | 2名乗車 |
試験場所 | 東洋ゴムサロマテストコース |
外気温 | -3.6℃ |
路面温度 | -2.5℃ |
試験方法 | 40km/hからフルブレーキングし停止するまで |
制動距離 | ➀49.1m ➁55.2m |
氷上コーナリング性能
氷上コーナリング性能比較試験 | |
---|---|
タイヤ銘柄 | ➀Winter TRANPATH TX (ウィンタートランパス ティーエックス) ➁Winter TRANPATH MK4α (ウィンタートランパス エムケーフォーアルファ) |
タイヤサイズ | 195/65R15 91Q |
ホイールサイズ | 15x6.0J |
試験車 | 旋器計測専用車両(4WD,ABSあり) |
タイヤ空気圧 | 前200kPa,後200kPa |
乗車人数 | 2名乗車 |
試験場所 | 岡山国際スケートリンク |
外気温 | 7.2~7.8℃ |
路面温度 | -3.8~-4.0℃ |
試験方法 | 旋回速度16km/hで等速直線走行を行い、コーナー進入付近でロックするまでステアリングを切りステアリングフォースを計測する。 |
サイズラインナップ
インチ | タイヤサイズ | 備考 |
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19 | 235/55R19 101Q | ⑨ |
225/55R19 99Q | ⑨ | |
18 | 225/45R18 91Q | |
235/50R18 97Q | ||
225/50R18 95Q | ⑨ | |
215/50R18 92Q | ⑨ | |
235/55R18 100Q | ||
225/55R18 98Q | ||
215/55R18 95Q | MK4a | |
235/60R18 107Q | 1,⑨ | |
225/60R18 100Q | ⑨ | |
235/65R18 106Q | ⑨ | |
17 | 215/50R17 91Q | |
225/55R17 97Q | ||
215/55R17 94Q | ||
205/55R17 91Q | MK4a | |
225/60R17 99Q | ||
215/60R17 96Q | ||
225/65R17 102Q | ||
16 | 205/55R16 91Q | |
215/60R16 95Q | ||
205/60R16 92Q | ||
195/60R16 89Q | ||
215/65R16 98Q | ||
205/65R16 95Q | ⑨ | |
215/70R16 100Q | ||
15 | 215/65R15 96Q | |
205/65R15 94Q | ||
195/65R15 91Q | ||
185/65R15 88Q | ||
215/70R15 98Q | ||
205/70R15 96Q | ⑨ | |
175/80R15 90Q | ||
備考1.エクストラロードタイヤです。 備考2.WinterTranpathMk4aです。 備考⑨.2017年9月発売予定です。 |
まとめ
➀唯一のミニバン専用(ハイト系車専用)がなされたスタッドレスタイヤです。
➁ミニバンやハイト系自動車のふらつきをしっかり押さえてくれるので、ふらつきが気になる方には良いでしょう。
➂氷上性能にはやや不満が残ります。
➃ミニバンやハイト系自動車特有の偏摩耗は抑えてくれますが、多くの方はゴムの劣化によりスタッドレスタイヤを交換するので、アスファルト走行の多い準降雪地であって走行距離が多い方以外ではこのメリットを享受しにくいでしょう。