トーヨータイヤが新たなフラッグシップタイヤ「PROXES Sport(プロクセススポーツ)」をリリースしました。2012年に発売されたのフラッグシップタイヤ「PROXES T1 Sport(プロクセス ティーワン スポーツ)」の後継モデルとなるプレミアムスポーツタイヤ(※トーヨーの位置づけはUHP)です。強くヨーロッパを意識した設計となっています。
技術的な特徴
新たなゴム開発技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」により相反する性能である転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を高いレベルでバランスさせた新コンパウンドを開発、採用しています。また最適化された新パターンも加わりプレミアムスポーツタイヤに要求される走行安定性やグリップ性能、快適性能などあらゆる性能をバランスよく実現させています。
➀リフレクトブロック
ハンドリング性能と制動性能を強化しています。一見方向性パターンのようですがインサイドアウトサイドパターンなので、左右でサイプの向きが異なる。直進安定性や排水性を考えると違和感があるところですが、トーヨータイヤとしては性能に差異はないとの見解だそうです。
➁動的テーパーデザイン
サイプの角を落とすことでグリップ時に角が溝に巻き込まれることによるグリップ性能の低下を防ぎます。これによりトラクション性能とハンドリング性能を向上させています。またフェザーエッジを抑えて偏摩耗を抑制してくれます。
➂高密度サイプ
濡れた路面での高いトラクション性能とロードノイズ、パターンノイズを低減させています。
➃高剛性リブ
高剛性のリブにより横方向の力にも強固で腰砕けしにくいので、しっかりとグリップし安定したコーナリングを実現しています。
➄バレルブロック
通常のブロックとタイヤの断面を比較してみましょう。
接地圧を均一化しグリップ性能の安定性能を向上させています。ブロック単位の偏摩耗も抑制してくれます。
PROXES T1 Sportからの改良点
ミクロに路面追随性能を発揮する新コンパウンドと新パターンによりウェットブレーキ性能が7%アップし、転がり抵抗性能が23%向上しています。また快適性能がやや改良されています。
国産のプレミアムスポーツタイヤとしては非常に軽い仕上がりです。サイドウォールも欧州のタイヤ並みに薄く軽量化されておりT1Sportとの比較で、1本平均1kg程軽くなっているとのことでした。バネ下重量を軽量化できるのでハンドリングにも少なからず良い影響を与えられるでしょう。
コンパウンドの質も良くなっており、粘りがあり柔軟性としなやかさが増しています。
まとめ
➀全サイズでウェットグリップ性能のラベリング最高グレード’a’を取得しています。
➁様々な最新技術が投入され走行性能と快適性能がバランスよく仕上がっています。
➂テーパーデザインやバレルブロックで接地圧の均一化や偏摩耗が抑制されています。
➃大幅な軽量化が実現されておりハンドリングや低燃費性もアップしています。
トーヨータイヤとしてはUHP(ウルトラハイパフォーマンス)タイヤという位置づけですが、ナビゲーター的にはプレミアムスポーツタイヤの方が適当と考えます。
タイヤの位置づけから選ぶ(普通車)にも挙げた当サイトでのタイヤの位置づけ図
UHPタイヤの代表格と言えばコンチネンタル ContiSportContact6(5P)やピレリ P-ZEROやミシュラン Pilot Sport4Sなどのハイパワーマシンのパワーを十分に受け止めるタイヤですが、それらに比べると少し優しいように感じます。部分的な例を挙げれば、名立たるUHPタイヤではベルト補強材にスーパー繊維「アラミド※」とナイロンのハイブリッド繊維など使用するのが主流となっており、軽量ながら高剛性で超高速時でもトレッド形状の変形を抑えることで安定した接地面を確保しています。一方でPROXES SPORTは通常の繊維を使用しており、強度と重量で不利なため超高速域では遠心力での変形が懸念されるのです。この辺の設計の違いが「時速200km超での走行も普通にある」前提に設計された名立たるUHPタイヤと、PROXES SPORTとの差であり、「時速200km超の走行を普通」とはしていないのかなと感じるのです。
しかし日本の道は概ねきれいで時速200kmを出すこともないことを考えれば、走行性能で及ばないとしても、UHPタイヤのハードな乗り心地に比べてやわらかな乗り心地であるPROXES SPORTの方が多くの日本人に好まれるのかもしれません。
※アラミド…重量で鋼材の約5分の1、引張強度は約7倍。耐熱性、衝撃吸収性に優れ防弾チョッキにも使用されるスーパー繊維。