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・POTENZA S007A(ポテンザ エスゼロゼロナナエー)の横溝が気になる

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画像で見ていると意外と気が付かないけれど現物を見ると気になることが出てくることがあります。7月1日に発売されたブリヂストンのフラッグショップタイヤ「POTENZA S007A(ポテンザ エスゼロゼロナナエー)」にも気になることがあったので考察していきます。

 

百聞は一見に如かず

違和感を感じますか?

少し近づいて撮影してみましたが気になるところはあるでしょうか?更に拡大した画像が下です。(ともに画像クリックで拡大できます)

 

更に拡大

ナビゲーターが違和感を感じたのはここです。赤くマーキングした横溝と青くマーキングした横溝に注目してください。青のマーキングの横溝は深く切られており、これはよく見る普通の溝です。一方で赤のマーキングの横溝(?)は1mmあるかないかのごく浅いもので通常見られません。

 

横溝の役割

ここでタイヤの横溝の役割をおさらいします。
夏タイヤにおける横溝には主に2つの役割があります。

 

Ⓐトレッドの硬さを調整することで接地圧を調整します。またブロックを細かく仕切ることでパターンノイズを抑えて静かにします。リブに配置されている横溝は主にこの役割を担います。
Ⓑ縦方向の主溝による排水をサポートする役割があり、カーブなどで遠心力がかかった際に大きな効果を発揮します。ショルダー部分に配置されている横溝は主にこの役割を担います。

 

今回の注目している横溝はⒶの接地圧を均一化する役割を担っています。タイヤには常に大きな車重がかかり続けており、この力により水平方向へタイヤを伸ばすような力が働きます。一般に横溝は主にこの伸びを緩和することで接地圧を均一化するために切られています。

 

今回の浅い横溝は?

前置きが長くなりましたが、今回注目している溝が浅いのはなぜなのでしょう?
ナビゲーターの考えはこうです。新品の溝の深い状態のとき、即ちリブ山が高いときにには変形も大きく接地圧の均一化をするためには横溝が必要であるけれども、摩耗が進みリブ山が低くなれば変形が少なくなり横溝が必要なくなるのではないかと考えます。実は溝を切らなくても変形に対応できるならば、その方がタイヤが常に路面をとらえ続けるため運動性能としては有利です。そのためスポーツタイヤでは度々センターリブに溝を切らないパターンが存在し、先代のS001(左図)もセンターリブに若干の刻みはあるものの横溝はありません。今回発売された「S007A」はドライグリップの大幅な向上を目指したため可能な限り横溝を抑えて、初期の変形が大きく接地圧が均一化しにくい初期のみ浅溝を配しているのではないかと考察します。

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実際に聞いてみた

考察はしてみたもののナビゲーターの仮説にすぎないことは否めません。そこで実際にブリヂストンに聞いてみました。最初からそうしろという声もあるかと思いますがそれではあまりにも芸がないのでご容赦願います。
ナビ・・・タイヤナビゲーター、BS・・・ブリヂストン担当者

 

ナビ:
今回発売された「ポテンザの新商品S007A」について教えてください。
BS:
はい、どういったご質問でしょうか?
ナビ:
まず、基本的なところから確認させてください。リブにある横溝は主に接地圧を均一にする役割ということで理解に間違いないでしょうか?
BS:
その通りです。横溝はリブの変形により接地圧にバラつきが出来ないようにするのが主な役割です。
ナビ:
それを踏まえてセンターリブの浅溝(上図➁)とセカンドリブの浅溝(上図➀)についてです
BS:
はい
ナビ:
他のタイヤでは摩耗初期に消えてしまうような浅い溝は見受けられませんね?
BS:
はい
ナビ:
連続的に路面をとらえることを目指したため横溝を最小限にし、初期はリブの変形が多いため接地圧を均一にするために浅溝を配置したと考えましたがどうでしょうか?
BS:
セカンドリブについてはその通りです。ドライに重点を置いたので出来る限り接地を増やしましたが初期のリブ山が高い際はどうしても変形による接地圧のバラツキが出るため配置されています。
ナビ:
なるほど。センターリブについては違うわけですか?
BS:
はい。実はセンターリブの浅溝についてはデザインです。
ナビ:
機能的な意味はないと?
BS:
はい。センターリブはほとんど周方向の力のみのため接地圧にバラつきが出にくく、今回の設計では横溝は必要ありませんでした。しかし、見た目としてセンターリブに溝がないのは少々さみしいですから(笑)
ナビ:
なるほど。購入される方からの見た目を意識したわけですね。ありがとうございました。
BS:
ありがとうございました。

 

このようなインタビュー結果になりました。つまりナビゲーターの仮説は半分は正解、半分は不正解ということでした。

 

まとめ

・センターリブ、セカンドリブの浅い横溝の意味は何か考察、インタービューした。
・S007Aはドライグリップを最大限に発揮するためリブの横溝を最小限とした。
・セカンドリブの浅溝はリブ山が高く大きな変形が出る初期において、変形による接地圧バラつきを抑えるために配置した。
・センターリブの浅溝はデザインであり機能的な意味はない。

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・ブリヂストンのプレミアムスポーツタイヤ待望の新発売

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ブリヂストン党待望のポテンザのプレミアムスポーツタイヤ「POTENZA S007A(ポテンザ エスゼロゼロナナエー)」の発売が発表されました。「POTENZA S001」が2010年に発売されてから長く現役として活躍しましたが、S007Aが引き継ぐことになり、S001は一般市販向けとしてはその役目を終えることになります。

 

発売予定日

2018年7月1日

 

技術的な特徴

1. 優れたドライ性能

高剛性ハンドリングシート、S007A専用サイド補強、S007A専用コンパウンドを採用することでドライ路面でのハンドリング性能の向上を実現しています。

2. 高いウェット性能

S007A専用コンパウンド、マルチラウンドブロックを採用しウェット路面でのブレーキング性能の向上を実現しています。

3. コンフォート性能にも配慮

周方向のブロック配列を最適化することで、パタンノイズを抑制。スポーティーな走りを損なうことなく、ハイパフォーマンスカーにふさわしいコンフォート性能を追求しています。

 

特徴と考察

ドライ性能

ドライ性能の改善に注力して開発されておりドライサーキットでのラップタイムを2.4%も短縮しています。この数字は非常に大きなもので、例えばダンロップのリアルスポーツタイヤ「ディレッツァZⅡスタースペック」が「DIREZZA Z3(ディレッツァZⅢ)」へモデルチェンジした際のラップタイム1.5%短縮でも十分な驚きがあったのにそれを大きく上回っています。勿論S007Aはサーキット用のタイヤではありませんが、この強力なドライグリップ性能はハイパワーマシンの駆動力を路面に効果的に伝え、高い運動性能と安全性能を与えてくれるでしょう。

ウェットグリップ性能

ウェットの性能は「S001」から2%ほどの性能上昇を実現していますが、この数字は大きなものでなくラベリングも’b’と維持にとどまっています。十分な性能ではありますが最新のプレミアムスポーツタイヤとしてはやや物足りない結果と言えるでしょう。
例えば、ミシュランのプレミアムスポーツタイヤ「Pilot Sport4s(パイロットスポーツ4S)」は販売サイズの1/3ほどはラベリング’a’であり、グッドイヤーの「EAGLE F1 ASYMMETRIC 3(イーグル エフワン アシンメトリック3)」はサイズラインナップは少ないものの全サイズで’a’を獲得しています。

転がり抵抗性能

転がり抵抗性能では’B’~’C’とハイグリップタイヤとしては優秀ですが、それでも「Pilot Sport4S」は’A’~’B’、「P-ZERO」はEUラベル’C’~’E’(日本ラベル’A’~’C’相当)と同等以上の性能です。

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価格

ブリヂストンの発表価格はS001から価格は据え置きとなります。一般的な販売価格も一時的には上がるかも知れませんが、時間とともに落ち着くでしょう。

 

POTENZA S007

純正用タイヤ「POTENZA S007」は既に「Audi(アウディ) RS4」、「Aston Martin(アストンマーチン) DB11」、「FERRARI(フェラーリ) 488」、更に「日産NOTE NISMO S(ノート ニスモ)」への採用も発表されています。今回発売が決定した一般市販向けの「POTENZA S007A」とパターンは異なりますが構造などで一定の共通点を持っているとのことです。

 

まとめ

・非常に高いドライ性能を実現しています。
・プレミアムスポーツタイヤらしく快適性能と走行性能が高次元でバランスされます。
・ウェットは十分と言えますがプレミアムスポーツタイヤとしてはやや物足りないところです。
・転がり抵抗性能はハイグリップタイヤとしては十分な性能でしょう。
・価格は据え置き。
・純正採用されている「S001」は残るようです。

 

サイズラインナップ

korogariTeiko26:転がり抵抗係数 wetGrip26:ウェットグリップ性能
対象のタイヤサイズをクリックするとネット購入できます。
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トーヨー「PROXES Sport(プロクセススポーツ)」発売

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トーヨータイヤが新たなフラッグシップタイヤ「PROXES Sport(プロクセススポーツ)」をリリースしました。2012年に発売されたのフラッグシップタイヤ「PROXES T1 Sport(プロクセス ティーワン スポーツ)」の後継モデルとなるプレミアムスポーツタイヤ(※トーヨーの位置づけはUHP)です。強くヨーロッパを意識した設計となっています。

 

技術的な特徴

新たなゴム開発技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」により相反する性能である転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を高いレベルでバランスさせた新コンパウンドを開発、採用しています。また最適化された新パターンも加わりプレミアムスポーツタイヤに要求される走行安定性やグリップ性能、快適性能などあらゆる性能をバランスよく実現させています。

 

➀リフレクトブロック

ハンドリング性能と制動性能を強化しています。一見方向性パターンのようですがインサイドアウトサイドパターンなので、左右でサイプの向きが異なる。直進安定性や排水性を考えると違和感があるところですが、トーヨータイヤとしては性能に差異はないとの見解だそうです。

 

➁動的テーパーデザイン

サイプの角を落とすことでグリップ時に角が溝に巻き込まれることによるグリップ性能の低下を防ぎます。これによりトラクション性能とハンドリング性能を向上させています。またフェザーエッジを抑えて偏摩耗を抑制してくれます。

 

➂高密度サイプ

濡れた路面での高いトラクション性能とロードノイズ、パターンノイズを低減させています。

 

➃高剛性リブ

高剛性のリブにより横方向の力にも強固で腰砕けしにくいので、しっかりとグリップし安定したコーナリングを実現しています。

 

➄バレルブロック

通常のブロックとタイヤの断面を比較してみましょう。

接地圧を均一化しグリップ性能の安定性能を向上させています。ブロック単位の偏摩耗も抑制してくれます。

 

PROXES T1 Sportからの改良点

ミクロに路面追随性能を発揮する新コンパウンドと新パターンによりウェットブレーキ性能が7%アップし、転がり抵抗性能が23%向上しています。また快適性能がやや改良されています。

 


国産のプレミアムスポーツタイヤとしては非常に軽い仕上がりです。サイドウォールも欧州のタイヤ並みに薄く軽量化されておりT1Sportとの比較で、1本平均1kg程軽くなっているとのことでした。バネ下重量を軽量化できるのでハンドリングにも少なからず良い影響を与えられるでしょう。
コンパウンドの質も良くなっており、粘りがあり柔軟性としなやかさが増しています。







まとめ

➀全サイズでウェットグリップ性能のラベリング最高グレード’a’を取得しています。
➁様々な最新技術が投入され走行性能と快適性能がバランスよく仕上がっています。
➂テーパーデザインやバレルブロックで接地圧の均一化や偏摩耗が抑制されています。
➃大幅な軽量化が実現されておりハンドリングや低燃費性もアップしています。

 

 

トーヨータイヤとしてはUHP(ウルトラハイパフォーマンス)タイヤという位置づけですが、ナビゲーター的にはプレミアムスポーツタイヤの方が適当と考えます。
タイヤの位置づけから選ぶ(普通車)にも挙げた当サイトでのタイヤの位置づけ図

UHPタイヤの代表格と言えばコンチネンタル ContiSportContact6(5P)ピレリ P-ZEROミシュラン Pilot Sport4Sなどのハイパワーマシンのパワーを十分に受け止めるタイヤですが、それらに比べると少し優しいように感じます。部分的な例を挙げれば、名立たるUHPタイヤではベルト補強材にスーパー繊維「アラミド※」とナイロンのハイブリッド繊維など使用するのが主流となっており、軽量ながら高剛性で超高速時でもトレッド形状の変形を抑えることで安定した接地面を確保しています。一方でPROXES SPORTは通常の繊維を使用しており、強度と重量で不利なため超高速域では遠心力での変形が懸念されるのです。この辺の設計の違いが「時速200km超での走行も普通にある」前提に設計された名立たるUHPタイヤと、PROXES SPORTとの差であり、「時速200km超の走行を普通」とはしていないのかなと感じるのです。
しかし日本の道は概ねきれいで時速200kmを出すこともないことを考えれば、走行性能で及ばないとしても、UHPタイヤのハードな乗り心地に比べてやわらかな乗り心地であるPROXES SPORTの方が多くの日本人に好まれるのかもしれません。

 

※アラミド…重量で鋼材の約5分の1、引張強度は約7倍。耐熱性、衝撃吸収性に優れ防弾チョッキにも使用されるスーパー繊維。

 

タイヤサイズ

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